久しぶりにろくじろうに行った。
元気だったのに、前日までバイクに乗って畑仕事に行っていたのに、あっという間の出来事で、片足切断となってしまったおばさんが昼寝をしていたので、声をかけた。
「おばさん、おばさん、元気?」
そばに座っていた利用者さんが言った。
「寝てるのに、声かけて起こしちゃ、可愛そうだよ」
私は言った「いいんですよ、アタシのオバサンだから…」
その人は、私の嫁ぎ先から嫁に行ったオバサン。
だから知っている。
この人がどれほどの苦労を繰り返して
80歳まで生き抜いてきたのかを。
それなのに、子供も独立し、悠々自適の一人暮らしになって
突然の片足切断と、介護施設で世話になる暮らし。
それでも、オバサンは、手術直後からリハビリに励み、
我が施設に移ってからも、皆を笑わせたり、車椅子で一人でなんでもやった。
子どもたちは母の苦労を一番見てきたから、とても母を心配した。
朝晩、母を施設に送り迎えし、家に帰りたいと望む母のために、
夜は娘が母の家に泊まった。
今度は、そんな娘が大きな病に倒れ、
施設に来ることもままならなくなってしまった。
「オバサン、ずいぶん苦労してきたね。
オバサンにとって、人生って何?
どんな人生だった?」
昼寝をしていたオバサンを起こしてそう問いかけてみた。
彼女は答えた。
「神様の言うとうり…」
え?と聞き返すと、こう話してくれた。
一つも苦労なんかなかった。
全ては神さまの言うとおり。
神様の言う通りに、ただ淡々と与えられたもので生きてきたのだから
何の苦労もなかった
全ては、神様のイウトオリ…
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