いつもいつも自分を助け
見守ってくれくれていた父が
認知症になるなんて
想像さえ出来なかった。
兄の言葉の暴力に耐えかね
実家から連れて逃げてきた両親。
二人が暮らす家は、夫の実家を抵当に
大借金をして購入したアロマサロンのための一軒家。
まさかそこが、親の介護のための家になる
ということさえ、想像していなかった。
それでも、しっかり者の父がついているのだから
足元のおぼつかない
わがまま者の母との暮らしも
なんとかなるだろうと思っていた。
なんとかなると思おうと
自分で自分を励ましながら始まった
親の暮らしの応援のさなか
なかなか夜が明けないと
夕暮れ時の空を見つめ続ける父の異変
まさか、気のせいに違いない
間違いに決まっている
そう思いながら受診した認知症専門医
「間違いなく、アルツハイマーです
残念ですが、お父様は
あと二年ですべてがわからなくなります
そして、これは薬害ですよ…」
そう告げられたあの日
私はきっと、これからの暮らしをどうしようかと
平気を装いながらも、きっと動揺を
隠しきれては居なかったはず
今、思い返せば、
女房を連れて逃げてきた娘の家
自分がしっかりとしなければならない
これからの暮らしの中で
自分の脳みそが壊れてゆく恐怖と不安の
やり場のなさに
一番苦しんでいたのは
父だったはず
娘のアタシは、自分の事に精一杯で
いつも、いつも
自分の事にいっぱいいっぱいで
父の心の
これっぽっちも