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父の死を恐れているのは、娘のわたしだった
始めての降り立った大阪、この電車に乗ってフェイスブックでしか話した事のない、智子さん父娘に会いに行った。それが、大阪での仕事始めだった。
天職だと感じていた、公務員である保育士の仕事を手放してまで、この人を最後まで見てあげるのは、娘の自分しか居ないと思ったんだ。
13の頃から働き苦労して来た父を最後までみてあげたい。でも、その時は、まさか13年もの介護生活が続くとは、想像もしていなかった。
こんなに生きちゃったから、娘の私も年を取ってしまった。父をちゃんと送ったら、またいつでも仕事は出来るから。
あの頃は、そう思っていたんだ。
こわいのは、実は私の方なのかもしれない。
父の死を恐れているのは、父よりも、私自身なのかと、気づいてしまったというのだ。
「ふ〜ん、だからお父さんは、死ぬときは娘を連れて行くっていったんだ?」
あてずっぽうで、そんな風に返してみた。
「やだ、私は父が死んでも、まだ死なないよ。でも、そうか、父にはそんな風に写っていたんだ、娘の私が…」