むかし、館山でかおり庵というアロマサロンと、オーガニックカフェをやっていた。
そこへ、自称、ストーカーのような女性が現れた。私の書くブログを追いかけまくり、店にお客として現れ、ついには働きたいと履歴書を持ってきた。
二人の子供を残して、出てきた嫁ぎ先。病んだ心。汗をかきかき、面接を受けたのに、試しに働きに来いといったら、怖くて行けないと断ってきた。
あれから、何年経ったのだろうか?アロマセラピスト、介護職と、私の仕事にしがみついて来ながら、自分の夢を描き、躁と鬱と戦いながら、許せない自分の醜さと戦いながら、人の眩しさと戦いながら、夢を叶えたんだ。
精神障害に苦しむ女の子達の家を、居場所を作りたい。
叶うことなら、アロマで彼女たちの薬を減らしてあげたい。
家は建った。許可も降りた。入りたいと言う人も後を絶たない。
そしたら、また、自分の心がブロックされてしまった。もう、自分は治ったのだと思っていたのに、信じていたのに、また、自分のノミの心臓が「こわい!」と、叫び出し、身動きが取れなくなったんだ。
私なんかが、私なんかが、夢を叶えちゃいけない。これは、本当に私のやりたい事ではなかったのではないか?今ならまだ、引き返せるかもしれない…
今日、久しぶりに、そんなななちゃんを訪ねてみると、今、就労支援から帰ってきたという入所の女の子の食事をこれから作ろうとしている彼女がいた。
今日は、ここで暮らし始めた娘に、アロママッサージをしてあげたいと、自分の心を奮い立たせていたのだと聞かせてくれた。
突然訪ねた私に、ななちゃんはその娘を紹介してくれた。私は、その娘の手をマッサージしながらこう問いかけてみたい。
「さくらちゃん、友達はいるの?」「いません」「いるじゃない、ここに居るななちゃんが、あなたの友達、目の前の私も、あなたの友達だよ、今日からよろしくね。」
ななちゃんはね、こんな家をやるのが夢だったんだ。さくらちゃんが、この家に来てくれて、ななちゃんの夢は叶ったんだよ、ありがとうね、あなたのお陰でみんなの夢が叶ったんだ。
さくらちゃんは、虚ろな瞳をキョトンとさせて話を聞いてくれた。
「これからはね、あなたがこのマッサージを覚えて、後から入ってくる人にやってあげてね、そうなれる?なれない?いやいや、きっとなれるよ。願えば夢は叶うからね。きっと、夢は叶うから…」