「ろくじろうで働いてみたい」と言ってくださる女性との面接が有りました。
「大きな施設で働いた経験はありますが、小規模な介護施設で働いたことはないので、考え方ややり方に慣れるまで不安が有ります。」
何か心配なことはありますか?との問いかけに、スーツ姿の女性はそう答えた。
面接とは言い難い場所と面談のやり方にも、きっと驚いたことだろう。
素のあなたで勝負してほしい
でも、真剣にこう話してみた。
「介護福祉士のあなたではなく、個人のあなたで勝負をかけて欲しい。
お年寄りたちが人生最後の暮らしの中で、共に居たいのは介護福祉士とではない。
あなたと、当たり前の暮らしがしたいのだから。
一緒に笑ったり、泣いたり、喧嘩したり、真剣に当たり前にここで過ごして上げて欲しい。
介護をするのではなく、自分の未熟さをこの年寄りたちに許してもらい、育ててもらい、お年寄りたちの、同僚たちの、苦手な所をそっとカバーしてあげて欲しい。
あなたの子供たちを、ママの職場であるここへ連れてきて欲しい。
子供たちの息遣いを感じ、成長を見守り、共に悩み、許し許され…
幼かった子が幼稚園に上がり、学校を卒業し、その姿に老いてゆく彼らの琴線がどれほど揺さぶられることか。
ありのままの姿で共に暮らす。それに勝る介護という仕事が有るとは思えないでしょう?」
今日の暮らしに精一杯で、三人のわが子を育てるために、長らく離れていた再就職の為の面接に現れた彼女の心は、張り詰めていた。
ピンと弾けば、パンと割れてしまいそうで、こちらから問いかける言葉に、面接だと言うのに、あふれる涙をぬぐうことが精一杯だった。
あなたがここで一生懸命子供を育てながら働く姿を、年寄りたちが応援しない訳がない。
あなたは、あなたの子供たちは、きっとこの場で癒やされてゆくはず…
でもね、それにはたった一つ、条件があるんだ。
それは、腐った職場にしないこと。
自分がどう思われるのだろうか?
こんな事したら、仲間から外されてしまうのではないか?
あの人はずるい。自分が可哀想。自分ばっかり….
そんな被害者にならない事。
人と自分を比べないこと。
そんな被害者の塊になったときに、自分が毎日の大半を過ごす職場が腐ってゆくから。
夫が働かなくても、親を介護していても、収入が少なくても、借金があっても、私はかわいそうではない。
他人と勝手に自分を比較して、かわいそうな自分に成り下がらないで欲しい。
思考一つで、本当に可愛そうな自分になってしまうから。
幸せになろう!一年後に、今日の事を懐かしく思い出す自分になろうよ。
地球一周の旅にでる看護師さん
先日、ポスターを張って地球一周の船旅にでる資金を稼ぐのだという女性に出会った。
看護師になるための多額の奨学金を、三年間の学生生活中のアルバイトと、卒業後の一年間で死に物狂いで稼いで返してしまったという。
その結果、手に入れた自由と、夢を握りしめるために、世界を回るのだという。
「私、もう、決めたんです!」そう言いながら溢れる涙をパーカーの袖口で拭い続けた。
いじめられてきたこと、失恋したこと、夢を諦めないこと…出会ったばかりのおばさんとおじさんに語ってくれた。
子供の頃、学校へ行くのに、草履だったのか、下駄だったのか、靴を履いていたのか、裸足だっだのかを言い争う婆たち。
みんな、みんな愛おしい。
沢山、泣いて笑って、夢の後先を聞かせて欲しい。