山さんが、悔しそうに呟いた。
「こんなところ、ただ、飯を食って、遊んで、あ〜んもやることがねぇやで。ただただ、遊んでいるだけだ。生きている意味がねぇ。明日、死んじまえばいい。明日、爆弾が落ちてみんな死んじまえば良いんだ。」
「山さん、そうだね、その通りだね。みんな、みんなおんなじ思いなんだ…ねぇ、花さん。」
「そうだよ、私だって、そうだよ….(涙 )」
「みんなでさ、話そうか?みんなおんなじ思いだと思うから、年取って、これからどうしたらいいのか、話そうか?」
「話してどうにもなるもんでぇ」
そうだよね、何をしてあげることも出来ないね。働きたいんだよね、昔のように。本当は役に立つ自分で有りたいんだ。そして、家庭という居場所を失った悲しみ、老いて役に立たなくなってなお、生き続けなければならない切なさ…
利用者の花さんがずっと頷きながら山さんの聞いてくれた。
そして、話を聞き終わって花さんが一言、「男は弱ぇなぁ…」
山さんの話を聞きながら、ボケて十年苦しんだ父を思った。やっぱり山さんのような苦しみをずっと抱えて、ここで生き抜いたんだろなぁと…
今の自分では、生きている意味がない
人の世話になるばかりの自分
消えてしまいたい
人の役に立つ自分でありたい
今日、一日を自分らしく生きたい
ディサービスを始めた頃、そんな一人ひとりの苦しみや戸惑いに真剣に向き合い、一緒に悩み、沢山みんなで(スタッフも利用者も含めて)話し合って来た事を思い出した。
利用者さんたちの心の内と、自分達は真剣に向き合っているのだろうか?働きたい、人の役に立ちたいと願う彼らの本当の望を、自分達は正面から見ようとしているのだろうか?
そんな事を、山さんから教わった一日だった。
介護職って、一体、全体、何屋なんだろう?