荒城の月

今から三年三ヶ月前の写真が目に止まった。

アロマセラピストとして雇用した

スタッフのナナちゃんとルミちゃん。

アロマセラピストのままでは給料が払えないから

介護事業に転向することを決め

手探りで始めた介護屋

沢山の事を年寄りから学んだ

これほど面白い仕事があるのかと

皆で驚愕した。

それは、アロマ屋として生業を立てていた頃に感じた

面白さとも、一緒だった。

介護業界でも、思うまま、感じるままを言葉にし

言いたいことを引っ込めない自分は

介護保険というくくりの業界の中では

在る意味、不適切者になっていった。

当たり前に年寄りたちと暮らし

当たり前に、死にゆく人たちに

アロマテラピーをした

その経験を聴きたいと言ってくれる人たちの元へ

話しに回り始め

みんなで泣き笑いをして暮らした

ろくじろうという施設に居ることが

少なくなっていった。

その頃、ずっとここまで自分を支えてくれていた

ルミちゃんが、若年性パーキンソンになり

鬱状況に陥り、退職を決めた最後の忘年会だった。

躁と鬱を繰り返しながら生きてきたナナちゃんが

この一年後、自分のような生きにくさを抱えた

女性たちの居場所を立ち上げる事を決めて

ろくじろうを去っていった。

そして三年後の今

自分たちは、予防医学としてのアロマオイルを

伝える仕事を生業として

自分たちの更なる夢を叶えようとしてる。

三人で踊った、荒城の月

死にゆく母が、車椅子でなんとか座位を保ち

見守っていた

この時に共に唄い、笑った年寄りたちの多くは

この世から卒業していった。

「私、思い出したんです

小池さんがいつも言っていた言葉

アタシたちにはミオクッた年寄りたちが

ついているから

成功しないわけがないと

ああ、年寄りたちが後ろに居る

そう感じる瞬間が今日もあったのです

その時、また鬱に引き込まれそうな自分から

戻ってきました」

いつも、自分たちは突き動かされている。

何かの力に。

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