青い空の向こう

「小池さん、ダイヤになって本当に良かった?」

電話の向こうで、その人は私にそう問いかけながら、ボロボロと泣いた。

ポツポツと抜けてしまう仲間、共に歩いてくれない人たち、
そんな現実に押しつぶされそうになっている彼女の不安な心には
どんな言葉も素通りしてしまうようだった。

「夫がね、単身赴任になってみて、初めてわかったんですよ。
どれほど彼が自分を助けるために、家事や育児を助けてくれていたのかを、
居なくなってみて、初めてわかったんです。

それなのに、久しぶりに休暇で帰ってきた彼に、
アタシはお金がないと酷いことを言って、
あんたが単身赴任を選んだからだと責めて、
夫を泣かせちゃったんですよ。

初めてです、夫があんなに大きな涙を流すのを見たのは…」

「アタシね、もう息子のために、
良い親で居なければならないっていう呪縛を捨てたんです。

息子の言動に怯えて暮らしている日々は、もういいやって、
彼は彼の人生を生きてるんだって、思えるようになったんです…」


助手席に座る私に、話して聞かせてくれる夫との話。

電車待ちのファミレスで、こちらから問いかけた、息子くんの様子。

何をやっても、今の自分の行動に自身が持てないと
電話の向こうで、泣くヒトの言葉


それは、みんな、かつて自分が歩いてきた

出口の見えない、若かった頃の自分の姿と重なる


わかるよ、わかるよ、そう言って
頷いて上げることしか出来ない自分。



家について、目をつむると観えてきた映像

空の上から、小さくキラキラと煌く星を眺めている自分

かつての、泣きべそをかいて、
誰にも泣きつくことの出来なかった

一人ぼっちで、強がっていた自分の姿のように、

若くて、青くて、キラキラと輝いていた。


自分はなぜ、空の上から
彼女たちを眺めているのだろうかと思った。


彼女たちの少し先を歩いてきたからだろうか?

「助けてあげることが出来なくて、ごめんよ」

たった一言、そういってくれたヒトの言葉に
泣き崩れた、それはかつての自分の姿。

手を引くことも、救い出すことも、守ることも出来ない
彼女たちの愛おしい人生

青い空の上から、眺める自分。

大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫だから

彼女たちには届かない声こえで

そうつぶやき続けることしか出来ない

青い空の向こうの自分












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